漢方の力で健康維持:現代人に必要な自然療法
2025/02/18
現代社会で忙しさに追われる私たちにとって、健康維持は重要なテーマです。その中でも、古来から続く自然療法として注目されているのが漢方です。本記事では、漢方の力を利用した健康維持の方法をご紹介します。漢方は、個々の体質や生活習慣に応じた処方が可能で、体の自然治癒力を高める効果があります。現代人に必要な自然療法として、漢方の魅力を再発見してみましょう。
目次
漢方を理解するために避けて通れない「気」という言葉

気は命の営みの源
東洋医学では、私たちの命と健康は、気・血・水という3つの要素が体内を巡ることで維持されていると考えます。中でも気を最も重要な要素と考えますので、東洋医学は気の哲学体系といわれるほどです。人間の体内の気は、生命活動のエネルギー源で、生命の源であり、血・水を全身に巡らせて栄養を供給し、老廃物を回収して排泄させる機能があります。人間の生命力の源である気は、2つに大別され、「先天の気」と「後天の気」と呼びます。「先天の気」は、誕生した時に与えられ、120年生きられる生命エネルギーです。「後天の気」は、生まれた後に、外部から獲得するエネルギーです。紀元前から、人間の自然寿命(理想的に生きた場合の寿命)は120年と考えられていましたが、現代でも、人間の細胞分裂は、テロメアが50回で消失することから人間の寿命は120年としています。紀元前に、どのようにして、人間の寿命を120年と見つけられたのかは謎です。
「後天の気」は、<天の気>と<地の気>に分けられます。天の気は、呼吸によって空気中から取り入れられる気のことです。地の気は、飲食物を通じて取り入れられ、消化吸収によって作り出された気のことです。新鮮な空気や鮮度の良い飲食物を求めるのは、消耗していく先天の気を後天の気で充足させて、生命エネルギーを充足させるためです。
健康を維持して長生きをするためには、気の流れを乱さずに、先天の気を無駄に消費しない心がけが大切になります。

気の乱れの症状
気は、体内をスムースに上昇したり、下降したりすることで、頭から足先までの健康管理をしています。気の異常のうち、上に上がったまま、下に巡らなく状態を気の上衝といいます。このような状態の時は、のぼせて顔がほてったり、頭痛、めまい、動悸がおこったり、体の下部に気が不足するため、血が十分に巡らなくなり、足の冷えがおこります。
気の異常には、「気滞」「気鬱」「気虚」もあります。「気滞」は、気が滞ることによる異常ですが、多くはのどの回りに滞ることによって生じます。「金匱要略」という古い中国の医学書に、「吐けども出でず、飲めども下らず」と説明しています。のどの他にも、胸が詰まった感じがしたり、おなかにガスがたまったように感じることもあります。
「気鬱」は、鬱血やむくみ、のどの違和感、呼吸困難、不安感、抑鬱感、ヒステリー、ノイローゼなど、神経性の症状が特徴です。「気虚」は、気が不足することで現れます。気が不足するのは、気を蓄えたり取り入れたりする臓腑に異常が発生するためです。腎(気が宿る臓腑)の能力が低下すると気を蓄えられなくなり、肺の能力が低下すると呼吸により空気中から気を取り入れにくくなります。脾胃の能力が低下しますと食物から気を取り入れにくくなります。気が不足しますと、疲れやすくなったり、体がだるい、食欲がないといった状態になり、病気にかかりやすくなります。「病は気から」という言葉があるように、気は、私たちの体を病気から守り、健康に保とうと働いています。この気の力が弱まり不足すると病気になります。

病は気から
「病は気から」という言葉がありますが、気は、私たちの体を病気から守り、健康に保とうと働いています。「病は気から」は、言いかえると、「病気の原因は体内の気の乱れにある」という意味になります。正しい気のあり方を乱し、病気を起こそうとする原因のことを「邪気」、体を病気から守る気を「生気」と呼びます。邪気が生気を上回った時に病気がおこります。生気には、もともと免疫力、抵抗力、治癒力がありますので、邪気が入り込んでも、すぐに発病するわけではなく、邪気と戦う中で、生気が不足してきて、邪気が盛んになり、気のバランスが崩れて病気になります。

現代人における漢方療法の重要性
現代社会は、江戸時代に出会う一年分の情報が、一日にして脳に飛び込んできているといわれるほど、情報過多の中で生活していますので、脳疲労状態からの「気」の乱れ、体調不良をおこしやすいです。人間の大脳は、知的な「新皮質」と本能的な「旧皮質」があり、大脳の命令によって、「間脳」が対応しています。たとえば、「これをしなさい」という情報が入りますと、知的な新皮質がキャッチして、旧皮質に「すぐにやって」と命令します。旧皮質が「よしわかった」と素直に従い、間脳が対応している時は、脳疲労からの体調不良はおきませんが、命令が度を越してきますと、本能的な旧皮質が、「休みたい、やってられない!」と反旗をひるがえし、間脳が乱れてきます。間脳には、五感、食欲中枢、自律神経中枢がありますので、見るもの、聞くものに関心がうすれ、食事が味気なくなり、情報処理能力の低下、不眠、気分の落ち込み、イライラ、盲目的に頑張り続け燃え尽き症候群などをおこします。気の乱れを正し、体調不良を改善する漢方療法は、現代人にとっても重要な手段となっています。漢方は、体質や症状を個別に分析し、最適な処方を行うことで、自然治癒力を引き出す役割も果たします。漢方療法は、現代人にとって欠かせない健康管理の一環として位置づけられるようになっています。